奈良町は、中世に東大寺・春日大社・元興寺などの社寺の周辺に成立した門前郷をもとに、近世にかけて商業都市として栄えました。都市化とともに、完成された町人の住まい、商いの場として町家が建てられました。開発の手が入らなかったことが幸いし、近年まで江戸から昭和初期に建てられた町家が多く残り、伝統的な町並みを形成しています。しかし、町家はまだまだしっかりとした構造体や様々な魅力を残しているにも拘らず、どんどんその姿を消し、伝統的な町並みも失われつつあります。現在の生活様式や快適な住環境(個室化、水・光・温熱・音環境)に合わない、防災重視の考え方や改修コストの考え方、歴史的な建物が教えてくれる木の良さや木造の良さが周知されていないといったことが大きな理由と考えます。
一方、町家を再生・再活用しようとする動きも出てきました。近年は、メリハリのあるデザイン、環境共生・素材の考え方、お洒落な住まい方や商い、新しい住宅設備といった要素が取り入れられ、さまざまな形で活用されています。
私たちは、伝統的な町家について学び、現代に活かす方法を考えています。また、町家だけでなく、奈良町に多くの社寺があることが伝統的な景観に大きく寄与していると考え、文化財などの歴史的に価値のある建物の保存修理に関する活動も行っています。